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日経MJ・ゆる起業のススメ

2022年11月07日

【ゆる起業のススメ】離乳食用具、経験踏まえて事業化

 今回は、離乳食の苦労をきっかけにベビー食具で起業された方を紹介します。乳幼児向けの食器・エプロン・カトラリーなどを販売するリノワ(東京・中央)の沖田加奈子さんです。


 沖田さんは大学卒業後、旅行会社の営業職を長く勤められ、その後も営業を中心にお仕事をされてきました。退職後には、ビジネススキルの向上のため、明治大学の社会人向け履修証明プログラム「女性のためのスマートキャリアプログラム」に参加し、半年間かけてマーケティングを含むビジネス領域全般について勉強されました。


 そんな中、2019年に第1子を出産。子育てする中で、英国発祥のBLW(ベイビー・レッド・ウィーニング)という新たな離乳の考え方に出会います。


 日本の従来の離乳方法は、大人が食べ物をスプーンなどで口に運んで食べさせるのに対し、BLWは赤ちゃん自身が手づかみで食べ物を選ぶ、というもの。


 子どもの意思を尊重する点では魅力的でしたが、赤ちゃんは食べ物やお皿を投げたりするため、食事の世話が大変になります。BLWで離乳をするためには、専用の道具があった方がいいと沖田さんは考えました。


 当時、日本ではまだあまり知られていない離乳方法だったため、沖田さんは英国の電子商取引(EC)サイトをいくつも検索して商品を購入し、使い心地を確かめました。使用感などをSNS(交流サイト)に投稿したところ、想像以上の反響があり、多くの離乳食に悩みを持つ方から直接メッセージが届くようになりました。沖田さんはこのことをきっかけに起業を考えるようになります。


 沖田さんは日本人の好みやライフスタイルにあった、手づかみ食べ時期に特化した食器・エプロンの製造販売を行おうと考えましたが、そのためには工場を探す必要がありました。当時、まだ法人ではなく個人での活動だったため、国内では探すのが難しく、海外の工場に依頼することになりました。


 慣れない英語で多くの工場に問い合わせ、製品のサンプルを作ってもらえるか交渉をするのには苦労したといいます。出来上がって届いたサンプルは、非常に満足のいく出来でした。


 商品化に触れずにSNSに投稿したにも関わらず、非常に多くの問い合わせがあったそうです。改めて世の中にはこれらの商品を必要としている人がいると確信し、法人化して事業をしていくことを決心。2020年10月にリノワを設立しました。


 沖田さんは製品企画から販売まで自分でされています。起業した当初は、慣れないことが多く戸惑ってばかりでしたが、中間業者を入れてしまうとその分商品の値上げに直結することや、一通り理解するためにも、時間がかかってもすべて自分でやろうと決めているようです。


 現在、販売はあえて自社HPでのみとしています。お客様とのコミュニケーションを独自に設計でき、ブランド力を高めるには最適だそうです。


 沖田さんのように、起業前からビジネスキルの習得のためにスクールやセミナーに参加する方は多いです。難易度やプログラムの期間など様々ありますが、起業を考え始めたばかりの方は、まず初心者向けの起業セミナーに参加してみるのがおすすめです。(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)

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