定年後に起業してコンサルタントとして活躍する方は多数います。特に経験、人脈が必要な分野であれば、若い人にはないシニアならではの強みを生かせます。ただ形のないサービスを売るには工夫も必要です。実績をアピールするためのセミナーを開いたり、著書を出したり、人の紹介やマッチングサイト等を通じた営業もしています。
藤原プロデュースの代表、藤原邦一さん(64)は、会社のブランド力向上につながるプロデュースを手掛けています。資生堂に36年間勤め、その内15年はパリ・ミラノに駐在し活動されていました。商品開発、マーケティング、広報などを長年経験。欧州では化粧品のプレスイベントに加え、大学等でのブランドイメージの講演のほか、コンサートやファッションなど芸術・文化交流のイベントプロデュースを主に手掛けてきました。
プロデュースと言っても仕事内容は多岐にわたります。ブランドイメージを発信するイベントでは、色々な制作プロダクションや人と組み、最大限のパフォーマンスを追求しました。著名人のトークショーでは藤原さん自らがタイトルやストーリー、プレゼンテーションなどを作成。司会進行から飲食メニューの選定までを、一人で準備したこともありました。
起業時に得意分野や強みを生かせると売上高が早く上がり、リスクを減らせます。藤原さんは定年退職後に起業しました。海外生活が長く、コミュニケーション力が磨かれたことが強みといいます。
今まで自分が培ってきた経験で何ができるのか自問し、これからの人生を楽しくチャレンジしたいとの気持ちも強かったそうです。「藤原さんと一緒に仕事をしたい」との声に押され、2016年12月に株式会社を設立しました。
しかし、しばらくは新規の仕事を獲得するのにとても苦労したそうです。会社のブランディングや各種イベントのプロデュースは、大手広告代理店やイベント専門会社などが得意としています。さらに「プロデュース」という仕事は形がなく、成果も見えにくいものです。起業したばかりの会社が営業するのは容易ではありません。
起業当初は、人材派遣会社や営業支援会社に登録したこともあったそうです。小さな食事会や、ギャラリーでの個展などの招待、異業種交流会などにも積極的に参加し、新しい人脈作りを続けてきました。すぐに仕事に結びつくことはなかったそうですが、一つ一つの仕事の実績を積み上げることで、3年目から紹介や協力してくれる人が増えてきたそうです。
藤原さんはブランドのプロデュースにあたって「ぶれてはいけないこと、本質を見極めること」を大切にして、これを信念に掲げて仕事をしているそうです。
イベント自体は華やかで一瞬で終わります。そのイベントを通じて「会社やブランド、ヒトをいかに輝かせることができるか」を追求し続けています。そのための準備や演出は惜しみません。裏方として、丁寧にプロデュースする姿勢が伝わってきました。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)