今回は建築設計や企業向けのブランディング支援を手掛けるソライロデザインワークス(横浜市)の今井将さんを紹介します。今井さんは大学で建築を学んだ後、デベロッパーで働きながら一級建築士の資格を取得。転職して設計事務所で経験を積み、2018年に個人事務所として起業し、20年に法人化しました。
依頼者とまず仕事抜きの関係性を作り、お互いを理解してから受注につなげるスタイルを取っています。ネットでのやり取りだけですべてが完結してしまうことも珍しくない時代ですがこのスタイルを取るのには理由があります。
建築を依頼する際、まだ形もないできていないものに対し高額の支払いが発生します。お客にとって決断のハードルは高いのです。そこで今井さんは、自分のことをよく知っている人ならばそのハードルが低くなり仕事も頼みやすくなると考えたそうです。
そのため「遊びの中で出会う」ことを意識しスポーツやバーベキューをはじめとするイベントを年30〜40回開き、交流を通じて参加者に建築士でもあることも覚えてもらっているそうです。
イベントで数多くの人と出会いますが、仕事につながるのはわずかです。付き合いを深めるには時間が必要となります。ただその分関係性が出来ているため、ビジネスが成立すれば長期にわたる依頼になることも多いそうです。
建築設計はその都度、新規で案件を取らなければならないので、収入が安定しない面があるそうです。そこで今井さんは企業向けンディング事業も始めました。
ブランディング事業は、会社や店舗で使うアイテムのセレクトから、文具などのデザイン、ロゴ制作、店舗設計まで多岐にわたるそうです。
今井さんは事業を進めるにあたり、まずフットサルや本、アートなど趣味ごとに起業家を集めたコミュニティーを作り、出会った人に自身の事業を紹介するようにしたといいます。最初は単発の依頼から始まり、打合せやコミュニティー内での対話を重ねて信頼関係を築き長期的な仕事にも結び付けたといいます。
事務所を法人化した?年は新型コロナウイルス感染が広がった年でした。事業プランについては当初の思惑が外れ、苦労したといいます。そうした厳しい状況を打破するためにいろいろと新しいアイデアを練り、行動し続けました。起業時から対面での顧客開拓に重きを置く方針でしたが、外出もままならなかった時はオンラインでのイベントも開いたりしたそうです。
今井さんのようにコミュニティーを自ら育て、仕事につなげることや、うまくいかないときには新たな方法を考え試すことなど、仕事の基本にしっかりと取り組み、継続していくことは大変なことです。「それでも実行する」ことが事業の発展にとって大切なことなのだと、今井さんのお話をお聞きするなかでつくづく感じました。(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)