今回は、得意分野で起業した方を紹介します。釡井康雄さん(67)は、複数の外資系企業に勤務した後、英語力を生かして2010年にTMSジャパン(東京・中央)を起業しました。日本に進出したい海外企業に対し、国内の市場調査やマスコミ向けの広報業務といったマーケティング支援を行っています。
事業領域はこれだけにとどまりません。日本企業向けには、外資との付き合い方を指導するセミナーを主宰するほか、提携などを促す効果的なプレゼンテーションの個別指導も手掛けています。バイリンガルの人材紹介も行うなど、事業内容は多岐に渡ります。
起業当初は仕事の依頼がない時期もあったようです。そんな時に力になったのが、かつて仕事でお付き合いした人たちでした。こうした方々が紹介してくれた仕事を成功させると、釡井さんの評判が広がり、徐々に仕事の依頼が増えていきました。
釡井さんが当時から意識しているのは、「お客への感謝の気持ちを忘れず、徹底的に要望に応えて尽力すること」です。
丁寧な仕事ぶりが評価されれば次にもつながります。顧客第一主義で仕事に取り組むことが釡井さんの強みです。
そんな釡井さんですが、学生時代は英語を苦手としていました。上達のきっかけは。中学生のころの英語塾の先生との出会いです。塾に通い始めて、疑問に思ったことを何でも先生に聞くようになり上達したそうです。
釡井さんは自身の軌跡を振り返り、人との出会いが最も大切だと感じています。現在も多忙の合間を縫ってセミナーや勉強会に参加し積極的に人脈を築いています。
釡井さんはセミナーの参加者だけでなく、講師との関係作りも大切にしています。様々な情報共有につながるからです。人脈づくりの手法は人それぞれです。自分にあったスタイルを見つけることが重要です。
釡井さんに、現在の経営者を悩ませている新型コロナウイルス禍についてうかがうと、公的支援策を活用して乗り切っているとのこと。「持続化給付金」など国の支援策だけでなく、都道府県や市区町村が行っている支援策も活用されています。
釡井さんのように支援策を有効活用することは経営者にとって肝要です。こうした情報収集には、中小企業の向けの補助金情報が豊富にあるサイト「ミラサポplus(https://mirasapo―plus.go.jp/)」がおすすめです。
最後に仕事のやりがいについてうかがいました。自身の評判を聞いて新たに仕事の依頼をいただくことや、英語指導をした方からプレゼンの感想を聞くことが次のモチベーションにつながるとのことでした。
経営者として常に明るく前向きであるためには、外部の評価や情報を受け入れる姿勢が重要なのでしょう。経営に必死に取り組むと、批判も含めて外部の声に耳を傾けられなくなる人も散見されます。常にオープンな心で人や物事に接することで、困難や苦境の打開策がみつかるものなのです。(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)