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日経MJ・ゆる起業のススメ

2024年03月06日

【ゆる起業のススメ】車椅子の人に行動の幅広げる

 今回は、障がい者の移動格差を解消する取り組みで起業したニコ・ドライブ(川崎市)の神村(じんむら)浩平社長(40)をご紹介します。神村社長は?歳で事故に遭って以降、車椅子で生活をしています。2006年に米国に留学した際、足の不自由な方でも「手動運転補助装置」を使って車を運転し、自立している姿を見て衝撃を受けたと言います。健常者と同じ行動手段があれば人生の幅は広がると確信したそうです。


 帰国後、大手金融会社などで勤務しましたが、自分のやりたいことができず、それならば起業しようと決心したそうです。ちょうど車の手動運転装置を開発した技術者の方が、販売してくれる人を探していることを知り、すぐに連絡して共同で13年にニコ・ドライブを立ち上げました。企画から製造、販売まで全て自社で行っています。


 実は足が不自由な方の自動車運転には2つのハードルがあります。1つ目は免許取得時の問題です。教習所には足の不自由な方が運転できる車が少ないため、車を自ら持ち込む必要があります。2つ目は持ち込むための車を高額な費用をかけて改造しなくてはならない点です。これらを解決するため、後付けできる手動運転補助装置「ハンドコントロール」を開発しました。アクセル、ブレーキは手動で操作できます。日本には当時、着脱できる手動運転補助装置はなかったといいます。ほぼ全車種で改造する必要がなく簡単に取り付けられます。


 市販車にも着脱可能なので当初は、教習所のほか、自動車販売店などに法人営業を行っていましたが、計画通りに販売できなかったそうです。理念を理解して導入してくれた会社には、導入のハードルはだいぶん下がったという評価は得られました。しかし、障がい者へのサービスというソフト面だけでなく施設のバリアフリー化も必要で、まだまだ導入にはハードルがあるのが日本の現状でした。


 日本国内で車椅子を利用している方は約30万〜40万人いて、そのうち免許を所有している方は約半分の?万人くらいだと言われています。車を運転したいという、下肢に障がいのある方はたくさんいます。法人営業が中心だと理解が得られるまでに時間がかかりそうだと判断し、現在では、体験会などを通して、直接個人にアプローチすることにシフトしたそうです。そのほうが障がい者の方にすぐに実感して喜んでいただけるだけでなく、導入も早いからです。販売価格は約10万円ですが自治体の補助金も使えば負担額は抑えられるといいます。


 神村社長は起業したい人には「シンプルにやりたいことをやるのが一番ではないか」と話していました。最近では「車椅子電動アシスト」を新たな製品として製造・販売しているそうです。自動車を運転しない車椅子ユーザーにも、もっと快適な移動手段を提供したいとの思いから開発に至ったそうです。今後も製品の多角化などを進めて喜んでもらえるモノを創るとおっしゃっていました。


 神村社長のように、当初の事業計画や目標を修正し、新製品の開発やアプローチ方法の変更など、常にチャレンジすることで事業が軌道に乗ることは多々あります。また直接お客様にアプローチすることで得られた生の声はその後の製品の企画や開発にも大いに役立つことでしょう。


(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)

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