宮原紳之(みやはら・のぶゆき)さん(57)は、新卒の時、大好きな英語を使える環境で仕事をしたくて海外勤務の可能性が高い大手家電メーカーに入社しました。英国、シンガポール、中東のドバイなどに赴任し、2006年の帰国後はアジア中近東地域の統括マネジメントの任を負い奔走しましたが、その頃から日本の家電業界自体の業績は急激に陰り始めていて、早期退職募集第1弾が出されます。
「その時点では辞めて自分で起業なんて考えもしていませんでした。周りも、猛吹雪なのに外に出るヤツがいるか、という雰囲気でした。ところが会社のマネジメントが変わると社内の空気は一変。50歳以上の社員は早期退職をするのが潔いとする空気が新たに醸成された気がします。すごいストレスでしたね」(宮原さん)
10年末、一足先に通信関連機器メーカーに移った先輩から声がかかったのを機に早期退職を決意、転職します。
「新しい環境での仕事は大変でした。その会社の海外事業は成長途上で、何でも自分でやらざるを得なかったんです。しかし今になってみると、その経験が起業のことを考えるベースを作ってくれました」
新たな環境でスキルを積んだ宮原さんは、仕事を続けながら社会起業大学、起業スクールを経て16年4月に「株式会社Initium Tokyo」を設立しました。
「日本を海外に啓くという意味のラテン語で中小企業の海外販路開拓をお手伝いする会社です。特に今はシニア市場向け製品やサービスを海外につなげたい中小企業のお手伝いをしています」
ビジネスキャリアを最大限活用できそうな起業だと感じます。 (取材・構成:藤木俊明)